Short×Short









act.1 来栖有樹のマラソン事情


今日の体育は憂鬱だ。
何故かって、今日は私の大ッ嫌いな

「学園内5週ねー授業時間内に終わらなかったら評定1つ下がると思って頑張りなさい」

マラソンだからだ。

因みに学園内5週=約4kmであり、ここ水鏡学園の敷地はとても広い。
都立高校で走るより断然景色に飽きることはほぼない、が走る量なんて4kmは4kmに変わりない。4kmは4kmでしかない。

「はあああぁあぁぁ」

走る前に各自でしっかり体操を行う。アキレス腱を伸ばしながら深く、溜め息を吐いた私に体操を終えた蘿音がぽん、と肩を叩いた。

「ほら、頑張ろうよ」
「だってー…」

手首足首をくるくると回す。だって、だって苦手なんだもん。4kmとかありえない人が走る距離じゃないよ体力持たないよ絶対。
1年の時に既に経験済みだが、苦手意識は変わらない。完走はできるけど苦手意識は変わらない。

「あと15秒で開始するよー」
「うーいやだあ」
「有樹ちゃん、一緒にがんばろ?」
「るいなちゃーん」

ぐずぐず。情けない顔で累奈ちゃんに抱き付く。よしよーしと宥めてくれる累奈ちゃんは優しい!
「はいスタート!」
「ほーら、行くよ」

私の手と累奈ちゃんの手を引っ張って蘿音が先導する。
たったったっと軽快に走る蘿音の後ろ姿を見ながらスタート。こうして私の冬の体育の授業が始まる。

(相変わらず有樹はへろへろになってるなー)
(おーいうたー!ガンバレー!)











act.2 柏木千代の日常


こんにちは、水鏡学院1年の柏木千代です。
本が好きで図書委員をやっています。
水鏡学院の図書館(図書室じゃなくて館、なのです)は本館(教室棟)2階から渡り廊下で繋がっていて、5階建てのとても大きな図書館です。ライトノベルからハードカバーの本、雑誌や新聞までも充実していて飽きない場所。
自習室なんかもあって、地下には…書庫があるらしいのですが立ち入り禁止の張り紙が入学時からずっと貼ってあります。どんな本が保管されているのか…とても気になります!

そして学院内でも有名な生徒会の先輩方とは仲良くさせていただいてます。皆さん優しくて面白くて変なひ…いえ、いい人たちです。(「変って言った!変って!」)(「言ってませんいってません!」)
わたしが図書委員の当番でカウンターにいる時によく遊びに来てくれます。そうでなくても、わたしが図書館にいることが多いからよく会ったりもします。
時々、騒がしくなりすぎて先生に怒られるときがあります。わたしも巻き添えになったりとかも何度か。
そういえば何故わたしが生徒会の人たちと繋がりがあるのか、というと。

入学して委員会を決めて、活動が始まったばかりの頃でした。
初めての当番の日。この図書館のシステムに慣れなくて、一緒の当番の人はどうにもサボったらしく一人で貸し出しなどをやっていた時どうやったらいいかわからないのに周りに先生も先輩もいない。どうしようと困っていたら七槻先輩が助けてくれたんです。
七槻先輩は1年の頃に図書委員会にいたらしく、色々教えてくれました。
今思えばベタな出会いですね。
でもその時に七槻先輩と出会ったから久遠先輩や来栖先輩、燈室先輩、霖月先輩と知り合えたんだなぁと思うと、すごく幸運ですよねわたし。(「千代ちゃん…!」) (「来栖先輩、久遠先輩…くる、しいです…」)

「そういえば先輩たちに紹介して!っていう子多いんですよ」
「えーそうなの?」
「そうですよ」
「気軽に声掛けてくれればいいのにね」
「ま、あんましつこくされても困るけど」
「しっかしオレらモッテモテだな!」
「神凪は昔から女子にも男子にも人気だったからな」
「そんなことないよ」

あははっと笑い声があがったところで昼休みの終わり5分前を告げるチャイムが鳴る。
わたしが座るカウンターの周りのソファに座っていた先輩たちはあっと声をあげて慌しく立ち上がり駆け出していった。

「次教室移動じゃね!?」
「教科書取りにいかねーと」
「間に合うかなーっ」
「走ろ!」

ばたばたと走っていく先輩たちの背に「館内では走らないでくださーい」と投げ掛けるとまるで競歩みたいに出て行った。ぷっとつい吹き出してしまったのは先輩たちには秘密。
わたしは後とのことを司書に任せ、教室に向かう。自分の教室はここから近いから5分あれば遅刻はまずない。

これがわたしの日常。同じ学校に通う幼馴染の話もしようと思ったけど、それはまた今度ということで。












-------------------------
そんな彼らの日常の1コマ
短編集、みたいな感じで。もうひとつくらい書きたかったんだけどネタ不足ですorz
10/04/14 (Wed) 観月


image byirusu