10月になりとても過ごしやすい季節になった頃、ある1人の少年は悩んでいた。
「……ぇ…」
食欲の秋だからといって食べ過ぎたか。
最近おなかの周りが掴めるようになったのは気のせいか。
極めつけは、今乗っているWii-F○t。の、現在の画面。
『前回と2s以上の差があります』
「この板、死ねばいいのに」
ピリピリと少年の周りに冷たい空気が漂う。
そしてそのまま、にこりと笑う少年。
「これ壊れてる。修理だそ」
* * *
生徒会の仕事中、有樹の一言で全てが始まった。
「かーんなっ!ケーキ食べよー?」
「……」
いつも通り誘う有樹。
だがしかし、反応はいつもとは違った。
メンバーと生徒会室に電流が走ったような気がした。
「ケーキ…ね、うん。今日は…いいや」
それだけ言い残し、ぱたんと机に突っ伏する神凪。
「…わ、私変なこと言ったッ!?」
「いや、言ってないよ」
「でもいつもの神凪じゃないよー!」
「灰、何か知ってっか?」
「神凪は今ダイエット中だ」
『え』
灰の言葉に反応しゆらりと起き上がった神凪の目は、いつもの彼からは考えられないほど『ヤバい目』をしていた。
「灰」
その声はいつものかわいい系からは想像できないほど、低く響いた。
呼んだ名前にも十分に重みがあった。
「誰にも言うな、って言わなかった?」
「……」
「俺がダイエットしてるって?」
「お、おれ?神凪が俺だってよ黎!!!!!」
「有樹落ち着け!あれが、神凪の本当の顔」
「本当の顔…?」
「そう。神凪がこの水鏡学院高等部生徒会会長に選ばれた理由」
「私たちが選ばれたのって理事長の気まぐれじゃないのっ?」
「もちろん俺らも、選ばれた理由があるっていうこと」
「ただひとつ言えることは…多分、オレらの中で一番強い」
今まであまり喋らなかったリウが、意味深な台詞を口にした。『強い』には色々な意味がある。
丈夫、力が優れている。そして、緩みがない、定まる――
異能的な意味では、黎が一番かもしれない。
だが異能の能力だけで、理事長が会長を選ぶとは思えない。
神凪には会長になるにふさわしい『何か』があることを、理事長は見抜いていた。
「かーんなっ!そんな気にするほどでもないと思うぜ?触り心地柔らかい方がオレは好きだけどなぁ」
そう言いながら神凪に近づきおなか周りに軽く抱きつく。
それと同時に、灰はリウの頭に銃口を向けていた。
「…あれ」
「覚悟はできてるか?」
「な…なんの…?」
「的にされる覚悟」
「あと10秒待って下さい」
そう言い残し部屋から猛スピードで逃げるリウ、それを猛スピードで追いかける灰。
なんとも面白い光景だった。
しかしこの後、リウと灰は神凪と理事長にお説教されたという。
学校の中を走り回り器物破損。生徒にも迷惑をかけたこと。
そして、あとは神凪の個人的な話だった。
-------------------------
生徒会メンバーにはちゃんと選ばれた理由があります。
神凪の本当の姿、少しでも書けてよかった!
まだ謎が多いですね水鏡はっていう話と、食欲の秋のMix話でした。
結局、神凪は無事もとの神凪に戻りました(いろんな意味で)
10/10/28/(Thu) 藍月
photo by10minutes+